腹が立ったり、頭に来たり。矛先を他者に向けることは出来ても、結局、原因は自分の中にしか存在しない。
登山は意外に簡単だった。外輪山の頂上までは車。内輪山へは、平坦な道を歩くだけ。高山だけど怖くはない。
ところが、前に進めば進むほど、増してくるのは別の恐怖。
三原山は、ちょっと前に噴火したのだ。
冷え固まった溶岩の向こうに、焼き尽くされた野原や、真っ赤に染められた島の姿が、見えるような気がして。
火口はまさに、地獄が口を開けているようだった。火口を覗く遊歩道もあるが、もはや「遊歩」どころではなく、退散。
さて、三原山で目についた、明日葉という植物がある。
「今日摘んでも、明日には芽が出る」からその名がついたのだそうで、確かに、死に絶えたはずの大地からぐんぐん芽を出す生命力は、私の気力を回復させるのに充分だった。
大自然の中で、人は、謙虚にならざるを得ないのだ。些細な不満や失敗や、恥や人とのいざこざなんて、風に吹かれる雲みたいなもの。
行って良かった。山を下り、花を見て、島を後にした。