ゆかこの部屋

小さな幸せを集めて貯めるblog

インタビューしてもらった!後編

というわけで、大竹さんに書いてもらった記事公開。※固有名詞は編集しています

疑問はあっても、やっぱり仕事が好き
〜ゆかこさんの大切にしたいこと〜

 ゆかこさんとの出会いは自由大学の授業「地域とつながる仕事」でだった。キリッとした顔立ちと隙のない話ぶりから、堅い印象を受けた。経験則から言って、男社会の中で生き残ってきた女性は、男性よりも男性らしい。肩書きやらなんやらで武装をしがち、利用価値で人間を評価しがちなものである。
 インタビューまでに顔を合わせたのは、たぶん2回。ゆかこさんのブログを読んで、40歳を前にして生き方に迷っていることは知っていたが、ほぼファーストインプレッションのまま話を聞くことになった。果たしてゆかこさんは私のステレオタイプなとおりの人なのだろうか。答えはこの後の文章を読んでみていただきたいのだが、インタビューを終えてある種の「清々しさ」を感じた。

転職は直感。電車広告から現在の仕事へ

—今日はありがとうございます。まず、基礎情報から伺っていきたいのですが、ご出身はどちらですか?

ゆかこ:
実家があるのは静岡県熱海市です。いまでこそまちづくりの先進地みたいになっていますが、私が高校生の頃は地域経済が底の時で、大して面白いものもありませんでしたよ。

—現在のお住まいは文京区ですね。

ゆ:
はい。根津に住んでいます。谷根千の真ん中で新旧が混じった趣のある街です。オーナーと私とでシェアハウスをしていて、Airbnbで外国からのゲストも滞在しています。

—お仕事は何をしているのですか?

ゆ:
Rという会社に勤めています。勤め始めて10年になりますね。「RN」の部署で大学向けの営業企画をしています。

—プロパーでRですか?

ゆ:
いえ。大学を卒業してから、韓国で日本語教師をしていたんです。それは10代の頃からやりたかった夢でしばらく続けたのですが、日本語教師になったことで満足してしまって結局やめてしまいました。帰国して就いたのがRです。

—なぜRに?

ゆ:
電車に乗っていてたまたま求人広告を見て。自分の飽きっぽい性格にもあっているかなぁという直感で応募したら採用されたんです。

いい人が悪い人になる組織のあり方に異議

—ブログには「仕事を辞めたい」という話が載っていましたが、どういう思いで書かれたんですか?

ゆ:
去年の今頃ですね、強く思ったのは。仕事が多忙でとてもキツかった。長時間で業務量が多く、結果、社内の人間関係もギクシャク。一人一人は面白い人ばかりなのに、会議になると空気が重く、予定通りの進捗ができていない社員を責めて。。。なんだか、会社のためにいい人が悪い人になっていく。それが嫌だったんですよね。

—Rは、若い人がバリバリ働いているイメージがあります。

ゆ:
一人一人は個としてユニークなのに、組織になると兵隊になる。それも強烈な。そんな会社の嫌な時期に高坂勝さんの『次の時代を、先に生きる。』を読んだんですね。そしたら、やっぱり会社の働き方はおかしいと思うようになって。

—『次の時代を、先に生きる。』のどんなところに共感したのですか?

ゆ:
グローバル経済では強者はより強く弱者はより弱くなる、見えないところで犠牲が構造化されているところでしょうか。それは勤めている会社にも通じることで、たとえば、若手が過大なミッションを背負わされて、できなくて責められている。そんな理不尽があるんです。

やっぱり、Rが好き

—今の仕事は好き?嫌い?

ゆ:
嫌いではないですね。好きなことと、仕方がないことが混じっている感じ。

—どんなところが好きですか?

ゆ:
1つは会社の予算をとってプロジェクトをマネージメントすること。大変だけれど企画を考えて説得して実現するのが面白い。上に認められるってことよりも、「これいいよね」ってことを現場の社員と共感できた時が面白いですよね。
もう1つはユーザーのためになることをしているということ。単に「儲かりたい」だけでなく「社会的意義がある風」なことをしているのがやりがいになりますね。

—「風」ですか・・・?

ゆ:
学生を「会社員」として送り出すような仕事をしているのですが、他の生き方もあるよって言わなくていいのかな、、、というモヤモヤがありますね。自分が働き方で悩んでいるのに、学生に就職指南しているなんておかしいですよね。

—会社を辞めたいと思いつつ、辞めていないのはどういう経緯があってのことなのですか?

ゆ:
ひとつは、上司に慰留されたこと。都合を聞くよ、と。それから、一番辛い時期を切り抜けて少しは落ち着いたからですね。危機的な時でもすごい人がきて力技で解決しちゃうのがRのすごいところなんです。

—Rは好きですか?

ゆ:
好きです。悪い変化もするけれど、いい変化もする組織で、社内の人間がいろんなことを言える風土があるんですよ。答えのないことを仕事にしているので、チャレンジし続ける人は周りが応援しますし、努力する人が偉くなれる社風です。忙しすぎてそういうのがなくなっちゃうのは嫌ですね。

色を大切にする社会を肩肘張らずに

—Rからベンチャーを起こす人もいますし、熱海のまちづくりの仕掛け人である市来光一郎さんのような方もいます。自分で旗を掲げようというお考えは?

ゆ:
ありませんね。飽きやすいので、そこまで頑張れない。旗を掲げても始まったら自分が飽きて捨ててしまいそうなので。

—今回の自由大学の講座の感想は?

ゆ:
コーディネーターの友廣さん含め、ゲストの方々が話している「なぜ、これをやるのか」に共感できました。「これがあったらいいと思う」が純粋でわかりやすいんですよね。事業とそれで幸せになっている人とがストレートにつながっているというか、誰を幸せにしているのかがわかるのがいいですね。
対照的に会社の仕事は幸せにしている人の顔が見えにくいんです。「RN」は名前も顔も知らない学生のためにやっているわけですからね。実感が乏しいんです。

—ゆかこさんが考える理想の社会とは?

ゆ:
「色を大切にする社会」です。赤いものを青くはできない。みんな一緒ではダメで、ひとりひとりのカラーをそのまま生かして全体として綺麗なのがいい。個性を殺してしまうのではなく、個性がある人たちが集まってまとまるような社会ですね。

—その社会の実現のためにしていることは?

ゆ:
していることはないけれど、しないようにしていることはあります。
他人が自分と違っても、あーだこーだと口出ししない。ほんとは言いたくなっちゃう性格なんですけど、なるべく長所を見るようにしています。

【インタビューを終えて】

ダウンシフト、独立、複業、フリーランスとしての生き方などなど、自由な働き方を推進しようという動きがある。だけど、正解なんてものは決まっていなくて、その人にとっての納得感のある生き方を一人一人が決めるしかない。
そういう意味では、ゆかこさんは昨今の「働き方ブーム」に流されずに自分の働き方を作っているとも言える。会社への疑問を持ちつつも、「やっぱりRが好き」と言えること。そこに「アンチ会社員論」の人たちにはない清々しさがある。