珍しくオフィス(古民家)で作業していたら、
「コンコン」
と、見覚えのある人が硝子戸を叩いている。
古民家(醸造所)の改修をしてもらっている、棟梁のOさんだ。
「なぁなぁ、キミんとこの会社で農業詳しい人おらへんか?」
たまたま私しかいなかったのだが、私は子会社の新入社員である。
「一番聞いたらアカン人やな」とすぐに気づいたOさんだったが、そこから、ノンストップで喋ること1時間。
曰く、もう還暦を迎えたので、残りの人生は篠山にもっと貢献できることがしたい。
篠山は農家が多く、その高齢化によって、多くの問題が起きている。それなのに、それを解決できる仕組みがない。
古民家で地域おこししてる、キミんとこの会社なら、何かあるやろ、と。
質問にはちゃちゃっと答えたが、私が感銘を受けたのは、その想いの明確さだ。
曰く、農家は儲からない上に、重労働である。年取ってまでできる仕事ではない。
すると、高齢者たちは家に引きこもるしかなくなる。老夫婦だけで過ごしたところで、刺激もないし退屈だ。
そんな中、自分が還暦を迎え、「終活」ってものを考えたとき、「老後」ってそれで良いのか?もっと楽しくなくて良いのか?いや、楽しくなる仕組みを考案したい。自分が。
…で、冒頭の質問に行き着いたらしい。
ここ最近、モチベーション下がり気味の私だったが、熱い想いを聞かされて、自身の姿を顧みないわけがない。
私は一体、誰の何のために、ここへ来たんだったか。もっというと、どんな自分を救いたかったか、だ。
そんな風に考えていったら、改めてここはそれを実現するのに、相応しい場所だと感じられた。