本棚に入らなくなった本を、ブックオフで処分した。
その顔ぶれを見てみると、13冊中6冊が自己啓発書。考えてみれば20代後半~30代前半は、自己啓発ばかりしていたものだ。
私と自己啓発との関係は、27才でリクルートに入ったことから始まった。
リクルートという会社は、優秀な人が多いことで有名だが、私の配属された部署は、中でも精鋭揃いだった。
その頃の私は、OL稼業が初めて。その上、日本に1年いなかったため、まともに口も利けず、毎日がとても苦しかった。
しかし、人がどんなに苦しかろうと、会社は「成長」を求めてくる。キックオフや表彰式だけでなく毎朝のミーティングですら「思考は現実化する」など自己啓発ワードのオンパレード。ただでさえ優秀な人たちの、不断の努力を見せつけられた。
ほどなく私も「この通りにすれば成長できる!」と、大いなる勘違いを。自己啓発書を読み、理想の自分を思い描き、行動に移し、現実とのギャップに苦しみ、また読み、動き、苦しみ、の連続。
そして今回、本を処分することにしたのは、決して「理想の自分」になったからではない。「少しは成長した現実の自分」を受け容れられるようになったからだ。本を読み、行動したことで、「自分の身の丈」が分かったともいう。
今考えれば、自己啓発には苦しみが伴う。理想を高く置きすぎると、現実の自分を否定しなければならないからだ。しかし、なれもしない自分を目指すより、少しは成長できた現実を受け容れ、大切にしたほうが幸せを感じるなら、そういう卒業の仕方も、ありなのかもしれない。