ゆかこの部屋

小さな幸せを集めて貯めるblog

自己責任という冷たさ|ロスジェネのすべて

年明けに転職して以来、住民税が天引きされていませんでした。

一昨日その徴収が来て、本日それを支払い完了。現金86000円也。高い…。

 

とはいえ、金銭的には(まだ)困っていない私。一方、世の中はそういうわけでもないようです。

生活保護の申請が急増したり、

www.chunichi.co.jp

「特定警戒都道府県」に指定されていた道府県庁所在地の多くで、四月の生活保護申請件数が前年から二~五割増えていたことが、共同通信のまとめで分かった。休業要請などに伴い雇用情勢が悪化しているためとみられる。(中略)コロナ関連の解雇や雇い止めが全国で一万人を超すことが判明するなど、生活保護の申請は今後、全国的に増加するとの見方が強い。

アルバイトできない学生に、食料が配られたなんてニュースも。

mainichi.jp

横浜市社会福祉協議会ボランティアセンター(同市中区)は22日、新型コロナウイルスの影響でアルバイト先が休業するなどして困っている1人暮らしの学生を支援しようと、食料を提供した。学生ら約170人が10日分の米やレトルト食品を受け取った。

この平和な日本で「食べるのに困っている」なんて。

私の育った日本は、今や違う国になってしまった。コロナ禍を通じて、そんな風に感じている人も少なくはないでしょう。

 

学生のニュースを見て、思い出したのは「年越し派遣村」です。

年越し派遣村とは、

リーマン・ショックの影響により派遣切り等がおき、複数のNPO及び労働組合によって組織された実行委員会が2008年12月31日から2009年1月5日まで東京都千代田区日比谷公園に、生活困窮者が年を越せるように開設した一種の避難所である。

Wikipediaより

「派遣」といえば、今でこそ当たり前にいる存在だし、現に私もそうですが、不景気の際には一番に切られる、それもまた派遣です。

この不安定な存在が「当たり前」になったのは、1999年「改正労働者派遣法」の施行以降。

そして20年のときが経ち、不安定な存在が増えているのです。派遣だけではありません。学生もそう。自営業者もそう。

しかしその原因をコロナだけに求めるのは間違い。長いときをかけて日本社会は、不安定になってきたのですから。

 

そう考えるに至ったのは、1冊の本がきっかけでした。

「ロスジェネ」とは、

現在の30代なかばから40代なかばを指す。

失われた世代。就職氷河期の影響をもろに食らった世代。貧乏くじ世代。非正規第一世代。

のことで、著者である雨宮処凛さんも、1975年生まれのロスジェネ。

ちょっと上の世代には「サザエさん」の「磯野波平」(54歳)がいて、

波平は正社員として勤めて世田谷に家まで建てて子も孫もいるというのに、私は独り身。当然、子もなく孫もない。 

と書かれています。

私は1979年生まれのロスジェネですが、今更ながら「あっ!確かに失われてる!」と感じてしまったのでした。

 

では、今まで私が社会を恨もうとしなかったのは何故か。

「自己責任」だと考えていたからです(自由奔放に暮らしてきたのもある)

ロスジェネは、これまで多くの言葉に苦しめられてきた。

「頑張れば報われるんだから歯を食いしばって頑張れ」「努力は裏切らないんだから限界まで努力を重ねろ」「お前より大変な人はもっといっぱいいる」「社会のせいにするな」などなど、その手の言葉には枚挙に暇がない。

それらを一言で表すなら、やはり「自己責任」という言葉に集約されるだろう。

貧しいのも、不安定なのも、正社員になれないのも結婚できないのも将来の見通しが立たないのもすべて自己責任。おそらく、ロスジェネはその価値観をもっとも内面化している世代だ。

仮にロスジェネは「自己責任」だとしても、2020年の今、食べるのに困っている若者に、同じことがいえるでしょうか。

 

この本の第3章(「自己責任」と江戸時代)には、「自己責任」という考えが、実は江戸期にもあったことが書かれています。

しかし今と違うのは、「家と村」があったこと。江戸期にはそれが「救済」として機能していたのです。例えば「補償なき休業要請」があったとしても、「家」というタテ、「村」というヨコの繋がりで、救済されたということです。

一方、今の日本に「家と村」はありません。代わりは「国家(政府)」に求めるしかないわけですが、その政府が90年代以降励んできたことといったら、産業を育てるでも人材を育てるでもなく、派遣の増産も含む単なる賃金カットでした。

20年にも及ぶ、救済なき自己責任。その結果が今、コロナ禍の不安定な社会に現れているのではないでしょうか。

 

では、この不安定さをどう打開すれば良いのか。

難しいテーマですが、第3章の結びを引用して、本題は次回に続きます。

もっとちゃんと、自分と他人のより良き生活のための「税金と国家の積極的な使い方」を考えるしかない。たとえば最低賃金を1500円にしろとか、正規労働をもっと増やせとか。あるいは消費税を廃止して、大企業から法人税をきちんととって、高所得層からも累進課税でもっと応分の税金をとって再配分するとか、もっと公務員を増やすとか、もともと生活保護を受けていた人が国会議員になるとか、そういう仕組みを考えて行くべきだと思います。