コロナウイルスの影響で、都内の映画館は軒並み閉館の昨今。
旧作ならネットで見られるけど、見たい新作があるんだよ、見たい新作がぁー。と嘆いていたら、オンラインで見せてくれるところが増えてきたではないか。
中でも嬉しかったのが、こちらの1本。ウルグアイの元大統領、ホセ・ムヒカ氏のドキュメンタリー。
3/27公開「世界でいちばん貧しい大統領 愛と闘争の男、ホセ・ムヒカ」予告編
実は私も、配給会社のTwitterにリクエストしたのだ。そして見ちゃいました。公開当日に。
ムヒカ大統領といえば、2012年のリオ地球サミットで、「地球の未来と人類の幸福」についてスピーチしたことで有名な人物。
世界でいちばん貧しいムヒカ大統領によるリオ会議(Rio+20)スピーチ
私も感動しすぎて、絵本2冊も買ったけど、
この映画は2020年の今、コロナ禍の今、日本の為政者たちが好き放題している今、間違いなく見たほうが良い映画だと思う。
映画の主題は、ムヒカ大統領の「原点」である。
ぬいぐるみみたいに真ん丸な体で、今でこそ「ペペ」と呼ばれ、世界中で親しまれるムヒカ大統領だが、実は、
極貧家庭に育ち、(軍事政権下で)左翼ゲリラとして権力と戦い、愛するパートナーと離ればなれの苛烈な拘留生活を経て、
政治家になったことが、本人の口から語られている。
今の彼を作ったのは監獄での暮らし。その期間は13年にも及んだそうで、「喉が渇いたら(水がないから)尿をろ過して…」というエピソードからも、その壮絶さが窺える。
映画の中では、古びたトラクターを転がしながら農耕に励む質素な暮らしや、収入の大半を寄付して進める福祉活動について、また政治家として残した数々の名スピーチも見ることができるが、
最も心を打たれたのは、この言葉。
国民に選ばれた者は、国民と同じ暮らしをするべきだ。
優雅な暮らしをする某国の為政者に聞かせてやりたいぐらいだが、綺麗ごとでなく貫き通せるのは、本人曰く、
(ゲリラとして投獄された)独房時代の経験があったから。
孤独に耐えたその心で、
(闘争中に)片脚を13ヵ所、腹を12ヵ所撃たれた
その体で、「自由を獲得する痛み」を誰より感じてきたのだろう。
自ら苦しんだ人だから、苦しんでいる人の声に耳を傾けることができるのだ。
全編を流れるBGMは「タンゴ」。そのリズミカルなのに物悲しいメロディは、ムヒカ大統領の波乱万丈な人生と、どこか重なって聞こえた。
ちなみに私は、「豚よりよく食べる」愛犬のために、「大統領はもっと立派な仕事をするべき」とぼやきながらも、餌を料理してあげるシーンが好き。
最後に、日本のことを少々。
コロナ対策について、日本の為政者が世界最下位に輝いたらしい。
23カ国・地域の人々を対象にそれぞれの指導者の新型コロナウイルス対応の評価を尋ねた国際比較調査で、日本が最下位となった。日本の感染者数、死者数は世界との比較では決して多いわけではないが、安倍晋三首相らの指導力に対する日本国民の厳しい評価が浮き彫りになった。
その為政者はというと、
検察官の定年を65歳に引き上げ、内閣の判断で検察幹部の「役職定年」を延長できるようにする検察庁法改正案の委員会審議が8日、与党が強行する形で始まった。
(中略)8日の衆院内閣委に出席したのは自民、公明、日本維新の会の議員のみだった。検察庁法改正案への質問はなかった。与党は、来週中の委員会採決をめざす。
(中略)安倍内閣は1月末に政権に近いとされる黒川氏の定年延長を閣議決定。検察トップの検事総長に就ける道を開くことになったため、「検察の私物化」との批判の声が上がった。
国民のことは考えないのに、自分のことだけはしっかり考えているようだ。
同じ「為政者」として、天と地ほどの差を感じる。今も任せられない為政者に、未来はもちろん任せられない。
為政者は、選ぼう。