ゆかこの部屋

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Mくんの苦労と「失われた30年」

身近な人が、最近、職場で苦しんでいる。

辞めた前任の「やらかし案件」が、毎日発覚するらしい。5月末の退職からもう3週間も経つのに、連日火消しに追われているそうだ。

身近な人(以下Mくん)が今の部署に異動したのは3月。1人部署なので前任(以下Zさん)だけがいたが、Zさんは「大丈夫です、大丈夫です」を繰り返すばかりでまともな引き継ぎをしてくれない。一体何が「大丈夫」なのか。

Mくんは渡された資料(A3・2枚)とそこに示されたファイルを見て、自主勉強に努めた。次第に分からないことが出てきたので質問すると、スルーされるか、「これを見て」と言われるも、内容がまた意味不明。

几帳面な性格であるMくんは、遅々として進まない引き継ぎにストレスを感じていたが、いざ6月に入り本当に1人になると、毎日毎日「聞いてなかった」案件が発生する、とのこと。

 

ありそうな話ではあるが、さすがに毎日となると度を超えている気もする。私が傾聴に努めていると、Mくんはこんなことを言い出した。

「ここまで酷い辞め方は、Zさんから会社に対する『仕返し』なのかもしれない。」

どういうことかというと、Zさんは中途入社だったが、周辺部署との関係構築が重要な当該部署にたった1人で8年置かれた。そのせいか周辺部署との業務分掌がめちゃくちゃになっており、Zさんにも問題はあったものの、頑張っても評価されないような雑務をさんざん押し付けられていたようだ。人事は見てみぬふりをしていたのではないか、と。

その被害を今や自分が受けているMくんなのに、Zさんだけのせいにせず、組織の責任にまで言及するとは。や、優しい。

(画像と文章は全く関係ありません)

ちなみにMくんの会社は、なかなか腐った組織である。

偉い人たちは金と出世しか頭にない。組織の未来や部下の成長なんか考える管理職は皆無で、その意思決定は時代錯誤なものばかり。そのくせ上に従えない者は、人事とパワハラで押さえつける。どっかで聞いたことのある話だが、それもそのはず。Mくんの会社は日本の権力構造の中枢に近い業界なので、文化的にもそれに近いのである(私の推測です)。

 

ちょうど聴いていたラジオで「失われた30年」が話題に上っていた。

バブル崩壊(1991年)以降30年以上にも及ぶ経済的低迷のことだ。日本が経済大国だったのは昔の話。私もその一人だが、国民の暮らしは貧しくなった。

私が社会に出たのは2002年のこと。その末端でほぼ休みなく働いてきた肌感覚で、この30年に失われたのは次の3つではないかと考えている。

バブル崩壊〜2000年ごろ:経済成長
・2000年ごろ〜2010年ごろ:安定雇用(など人材への投資)
・2010年頃〜現在:働く人たちの心(パワハラ、メンタル、企業倫理の失墜など)

経済成長しないので、会社は社員を大切にしなくなった。結果、働く人たちの心が荒んでしまった。

もちろん、そんな会社ばかりではないだろうけど、このように考えていくと、Mくんの意見も理解できる。大切にされなかった人は、組織に報いることもできないのだ。Zさんだけに責任を問うのは、確かに間違いかもしれない。

 

ここでもう1つ、昔聞いたスピーチを思い出した。

今から10年近く前、R社という日本有数の営業会社で、当時まだ珍しかった「女性」が部長に就任したときの内容だ。

「仕事や働き方について文句がある人は遠慮なく言ってください。1人で言えば文句かもしれないけど、多くの人が言うことならそれは立派な「課題」です。それを解決する責任が私にはあります。」

当時のR社はゴリゴリの体育会系。気合と根性は非常に大切だったし、少なくとも見た目は、どんな壁にも立ち向かう強靭な社員が多かった。「文句」が黙殺される文化も少なからずあった中で、敢えてのこのスピーチである。目から鱗が落ちてしまった。

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要は、目の前の問題を誰の問題と捉えるか、なのだ。

個人だけの問題か、それとも組織の問題か。ひょっとすると社会の別の場所でも起きている問題かもしれない。

「よくあること」「○○さんに責任がある」「辛いだろうけど頑張れ」で済ませるのではなく、本当は誰の問題なのか、捉え方によって対応や責任を負う人も異なるだろう。

毎回Mくんに伝えるのは、「自分の心身を守って欲しい」ということぐらい。苦労する人が潰されるないためにも、問題を俯瞰して捉えなければならないわけだが、責任主体が遠くなるほど対応は難しくなくなってしまう。

不幸な連鎖をこれ以上大きくしないために、小さな個人には一体何ができるだろう。その始まりは、然るべき人に伝える「文句」なのかもしれない。