純粋さと実力は両立するか|なぜ君は総理大臣になれないのか

映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』を見てきました。

6/13(土)に公開以来、連日満員というこの作品。現職の政治家を追ったドキュメンタリー映画ですが、今年見た中でベスト3ぐらいに良かったです!

何が良いって、「政界のリアル」が分かり勉強になるという面もありますが、何より「日本を良くしたい」という小川さんの純粋すぎる想い、それゆえ「政党政治」に翻弄されてしまう姿が、予定外に泣けてしまったのです。

この人は、アレですね。政治家という生き物を2×2のマトリックスに分けるとしたら、小池百合子安倍晋三とは対極、ムヒカ大統領とは同じか近い枠に入る人ではないでしょうか。

希望の党』に希望はなかったけど、こういう議員がいたことに、少し希望を感じました。

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僭越ながら、映画の中身を紹介しましょう。

ドキュメンタリーの始めは2003年。「日本を良くしたい」という想いから、東大を出て自治省(今の総務省)に入った小川さんでしたが、官僚の立場でそれを実現することに限界を感じ、退職。32才で民主党から、衆議院選挙に立候補します。

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ところが、同じ選挙区の対立候補は地元メディアのオーナー一族(強すぎ・・・)でもある自民党の平井氏。「爽やかさ」ぐらいしか取り柄のないピカピカの1年生候補が太刀打ちできるはずもなく、得票率10%の差をつけられ敗北を喫します。

その2年後、辛くも比例で当選しますが、党内には選挙区>比例のヒエラルキーがあるため、政権どころか党内ですら出世できない日が続くことになりました。

小川さんは自称「日本を良くしたいオタク」。日本を良くする政策をあれこれ考えてきたのに、出世のために求められるのは、党利党益≒与党の批判や揚げ足取りばかりだったのです。 

本作で多くの尺が割かれているのは 、2017年の衆議院選挙です。

この時期に起きたことといえば、小川さんが所属する民主党の分裂・再編。そして当時、女性初の都知事として脚光を浴びていた小池百合子が(何故か)立ち上げた『希望の党』へ、小川さんのいる民進党も合流・・・という流れから一転、小池が「全員は入れない」などと翻したもんだから、「あんな卑怯な党に入るなんて!」と小川さん自身も非難を受けることになります。

逆風吹き荒れる選挙戦。今度こそ「選挙区で」勝ちたいのに!

妻は支援者に頭を下げ、両親は知人に電話をかけ、10代の娘2人は父と一緒に商店街周り。遠方から駆けつけた友人(大学教授)の応援演説がまた泣ける!全員野球の選挙戦です。

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そして、声をがガラガラに枯らしながら迎えた投票日、家族や後援会メンバーが固唾を飲んで見守る中、開票結果が出たのは深夜1時過ぎのこと(=接戦だった)。

・平井氏 81566票

・小川氏 79383票

得票率では僅か1.4%の差で、敗北・・・。

直後のがっくりと肩を落とす姿。本人が一番悔しいのに、集まった一人一人と握手を交わし「ありがとう」「ごめんなさい」を繰り返す姿。その無念さを想像したら、私も涙が3滴、4滴。

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ちなみにその後、小川さんは比例復活を果たしますが、同じ高校の2年先輩で、東大→官僚→民主→民進希望の党という流れも同じ玉木雄一郎氏は現・国民民主党の党首ですから、比例=出世が遅いのは実際その通りなのでしょう。

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さて、そんな小川さんですが6/11(木)の『JAM THE WORLD』に出演していたので内容を少し紹介します。引用が雑なので、できれば直接聞いてくださいw

※6/18(木)まで『タイムフリー』で聞けるはず

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まず、安倍政権は何故長く続いているかと問われた小川さん。

自民党の執念深さは、「権力の維持」に関してはあらゆることを乗り越えてくる。政策も人間関係も(←野党の考えた政策を横取りすることも含め)。そういう意味でプロ(の与党)だと思う。

ところが、野党はみんな自己主張が激しくてなかなかまとまれない。『権力なんて要らないから純粋でいさせてくれ』的な風紀がある。

それでも野党が必要な理由として、

(イギリスに)『保守政権は天然もの、非保守政権は人工物』という言葉がある。

自民党(=保守)は強いもの、富裕層、力のある人たちを背景にしているので、政治権力を持つことは「自然」なこと。

ところが、世の中には頑張って働いて自分と家族をぎりぎり支えてる、弱い立場の人、必ずしも富裕でない人もいる。そういう人の声を受けるのが旧民主党勢力(=非保守)だ。

(野党が)純粋にそうなりきれてるかは別として、大きくいうと力の強い人たちの声を代弁する勢力と、そうじゃない人たちの声を背負う政党とがバランスを取らなきゃいけない。ということは、野党がときどき(人工物のスペアとして)政権を取らなければならない。

にもかかわらず、2009-2012年の民主党政権が短命に終わった理由を問われると、 

自民党は極めて権威主義国家主義。国家のメンツや体面を維持する人たち。一方で自分たちは、市民の自由や人権に寄って立つ勢力。

但し、その理念を実現しようとしたときに素人じゃダメで、政権を運営するプロとしての気構え、ノウハウも必要だったはずなのに、(民主党には)それがなかった。

政権交代は野球の攻守交替に似ている。

与党は守備について社会を混乱させることがないように守りを固めている。野党は打席に立って、守備の弱いところを突く。何故なら守備が弱いと、その被害を受けるのは国民だから。

ところが民主党が政権に立ったとき、民主党は守備位置についてバットを振っていた印象があった。

政権を担当するとはどういうことか、国家を統治するとはどういうことか、それが体に浸み込んでないと、理想論や政策論だけじゃどうにもならないと感じた。

とのこと。極めて真っ当な分析というか、こんなに分かってる人に「与党の揚げ足取り」だけさせるのは勿体ないような気がします。

ちなみに私が好きなのは、終盤の「理想とする社会」に関して。

北欧は税金が高いけど、国民は不満に感じていない。ちゃんと自分たちのために遣われていると分かってるから。

北欧の人は「政治家が汚職をするなんて信じられない」という。一方日本では「政治家が汚職をしないなんて信じられない」。「あんな信用できない悪いヤツらに税金なんてビタ一文払いたくない」となっている。

北欧では「安心社会」ができている。教育、医療、福祉が無償。年金も万全だから、国民は安心して暮らし、何が起きるかというと貯金をしなくなる。すると経済が回る。日本で起きていることはその逆。

信頼が連鎖している国と、不信が連鎖している国の違いだ。

確かに私も、節約しちゃー貯金しているけれど、「不安だから」とは気づかなかった。貯金=当たり前すぎて。

要するにこれは、未来の不安のために今の楽しみを削っているということでもあり、「そんな人生は幸せか?」という問いにも通じるものがあります。

そして小川さんは、こうして話を結んでいます。

政治家と国民は車の両輪。

(北欧で)信頼できる政治家を選んできたのが国民なら、(日本で)信頼できない政治家を選んできたのも国民。 政治一流/国民三流もなければ、政治三流/国民一流もない。 

なるほど。

仮に日本が豊かでないとすれば、仮に人生が幸せでないとすれば、それが実現できる政治を国民が選んでこなかったからだと。

優れた政策より、パフォーマンスとポジション取りが重視される政治を、国民が許してきたということでしょう。純粋な政治家が出世できないないとしたら、「それが実力」ではなく、そんな政界を国民が選んだということでしょう。

一国民としては「自浄」を期待したくなるけれど、まずは一流の政治家を選べる一流の国民に、自分がならなければならないようです。